仕事から帰って、なんとなく求人を見る。
今と同じような業界。
仕事内容も、読んでいる限りではそこまで遠くない。
「こういう会社もあるんだな」
と思って下へ進む。
応募条件を見る。
実務経験3年以上。
○○を使った業務経験。
リーダー経験のある方歓迎。
そのあたりで、少し見る気がなくなる。
資格も特にない。
人に話せるような実績も思いつかない。
今の会社では毎日それなりに仕事をしている。
任されたこともやっているし、何年か続けてきた。
でも、転職で使えるものがあるかと考えると、
「自分には大したスキルがないな」
という感じが残る。
転職したいけど、スキルがない。
そう思うと、求人を探すこと自体がだんだん重くなります。
気になる求人を見つけても、
「自分が応募する求人ではない」
ように見えてくる。
今の会社に不満があっても、
「ここを出て、次に何ができるんだろう」
と考えると止まる。
そんなとき、一度見てみたいのは、
自分が「スキル」と呼んでいるものが、どんなものなのか
というところです。
「スキル」と聞くと、特別なものばかり浮かぶ
転職で使えるスキル、と言われると、
分かりやすいものが先に浮かびます。
資格を持っている。
英語が話せる。
営業成績で表彰された。
チームをまとめた経験がある。
こういうものなら、
「自分にはこれがあります」
と言いやすい。
反対に、自分の仕事に名前をつけられるものが少ないと、何も持っていないように見えます。
「今まで何の仕事をしてきましたか?」
と聞かれれば答えられる。
でも、
「そこで身についたスキルは?」
と聞かれると少し止まる。
毎日仕事はしているのに、転職でアピールできることとなると急に分からなくなる。
会社名や在籍期間、担当していた仕事までは書けそうです。
でも、
「活かせる経験・スキル」
と言われると、急に手が止まる。
そうなると、
「やっぱり自分には何もない」
と思いやすい。
でも、普段の仕事では、資格や表彰歴だけを使って働いているわけではありません。
毎日やっていることの中には、もっと名前のつきにくいものがあります。
毎日やっていることほど、「できること」には見えにくい
たとえば、取引先から問い合わせが来る。
内容を読んで、
自分で答えていいものなのか。
誰かに確認した方がいいのか。
今日中に返した方がいいのか。
それを見てから動く。
必要なら社内の人に確認して、返す内容をまとめる。
毎日やっている人にとっては、
「問い合わせが来たから対応しただけ」
で終わります。
数字の確認でも、納期の調整でも、本人にとっては「いつもの仕事」になっていることがあります。
特別な仕事ではないかもしれません。
けど、それを毎日どうやって進めているのかまで見ると、「何もしていない」とは少し違って見えます。
最初は分からなかったことでも、今では確認する場所が分かる。
よく起きるミスも分かる。
どこまでなら自分で判断していいのかも、なんとなく分かっている。
できるようになったことは、しばらくすると、
「できること」ではなく、
「普通にやること」
になっていきます。
だから「自分の強みがわからない」ときに、いきなり特別な能力を探す必要はありません。
まずは、
普段の仕事で、自分は何を見て、どこを判断しているのか。
そこまで戻ってみます。
人に説明すると、自分が知っていることが見えることがある
普段は何とも思っていない仕事でも、誰かに説明すると少し見え方が変わります。
たとえば、新しく入った人から、
「これって、どこを見れば分かりますか?」
と聞かれる。
すると、
「まずここを確認して、分からなければこの人に聞けばいいです」
と普通に答えられる。
自分では、特別なことを教えているつもりはない。
何度もやってきたから知っているだけです。
たぶん、
「半年くらいやれば誰でも分かる」
と思うこともあります。
それでも、今の自分はその仕事について、
どこを見ればいいのか。
どこで間違いやすいのか。
誰に確認すれば進むのか。
そういうことを知っています。
それが転職先でそのまま評価されるかは分かりません。
でも、自分が仕事の中で何を覚えてきたのかを見る材料にはなります。
「スキル」と言われると何も浮かばなくても、
「新しく入った人にこの仕事を説明するとしたら、何を伝えるだろう」
と考えると、出てくるものがあります。
「事務」「営業」だけでは、自分が何をしてきたか分かりにくい
これまでの仕事を振り返るとき、
「事務をしていました」
「営業をしていました」
くらいで考えることがあります。
間違ってはいません。
でも、その言葉だけでは実際に何をしていたのかまでは分かりにくい。
同じ「事務」でも、社内の数字を扱う仕事と、取引先とのやり取りが多い仕事では中身が違います。
「営業」でも、新しい顧客を探す仕事と、すでに取引のある顧客を担当する仕事では、毎日やっていることが違います。
だから、
「自分には何ができるんだろう」
と考えるときは、職種名より少し細かく見ます。
何を扱っていたか。
誰とやり取りしていたか。
どこまで自分で判断していたか。
そこまで戻ってみる。
厚生労働省のジョブ・カードでも、これまでの業務や経験、スキル、知識、役割などを振り返りながらキャリアを整理する考え方が紹介されています。
大げさな実績を探すというより、
実際に何をしてきたのかを、職種名より少し細かく見る。
それだけでも、「何もない」という感覚は少し具体的になります。
それでも、今の経験では届かない求人もある
ここまで仕事を細かく振り返っても、応募したい求人に必要な経験が足りないことはあります。
特定の資格が必要。
その仕事の実務経験が必要。
経験年数が条件に届かない。
そういう求人もあります。
毎日の仕事を振り返れば、どんな求人にでも応募できるようになるわけではありません。
ここで、
「本当はあなたにも強みがあるから大丈夫」
と考えてしまうと、また話が曖昧になります。
求人に必要なものが足りないなら、
足りないものは足りない。
でも、
「自分には何もない」
と考えていたときとは少し違います。
たとえば、
今まで顧客対応はしてきた。
社内との調整もしてきた。
でも、気になっている仕事では○○の実務経験が必要。
そこまで分かれば、
問題は、
「自分には何もない」
ではなく、
「この仕事へ行くには、今の自分に○○が足りない」
になります。
別の求人を見るのか。
今の仕事でもう少し経験を積むのか。
必要なことを学ぶのか。
問題が具体的になれば、考えられることも変わります。
「何もない」のか、まだ言葉になっていないのか
毎日やってきた仕事を、全部「仕事だから普通」として消してしまうと、求人と比べる前に「自分には何もない」と決めることになります。
実際に何をしてきたのかを見る。
そのうえで、求人に必要なものと比べる。
足りないものがあるなら、それを具体的に見る。
「自分には何もない」のか。まだ言葉になっていないだけなのか。
確かめたいのは、そこです。